2007 年 50 巻 3 号 p. 170-177
急性副鼻腔炎に続発した頭蓋内合併症の2症例を報告し, 1990年以降に本邦において報告された鼻性頭蓋内合併症例に自験例を加えた38症例に関して検討した。症例1は29歳男性, 急性前頭洞炎に前頭葉脳膿瘍及び硬膜外膿瘍を合併した。抗菌薬の全身投与に加え内視鏡下鼻内副鼻腔手術, 開頭硬膜外膿瘍洗浄ドレナージ術, 脳膿瘍外減圧術が行われた。症例2は16歳女性, 前頭洞を主体とする急性副鼻腔炎に硬膜外膿瘍を合併した。抗菌薬の全身投与に加え内視鏡下鼻内副鼻腔手術, 穿頭硬膜外膿瘍洗浄ドレナージ術を施行した。2症例とも後遺症を残すことなく治癒した。38症例では脳膿瘍等の膿瘍性疾患が多数を占め, 原因病巣部位は前頭洞が多かった。また内視鏡下鼻内副鼻腔手術が大多数に, さらに脳外科によるドレナージ手術が半数以上の症例に対し施行され, 有効な治療法と考えられた。鼻性頭蓋内合併症は造影CTやMRIによる迅速な診断と脳神経外科と連携した適切な治療が必要である。