2009 年 19 巻 2 号 p. 123-130
一過性内耳虚血の動物モデルを用い、虚血後に様々なタイミングで低体温(32 ℃)を負荷することにより内耳障害が防御される限界点を探索するとともに、低体温の作用メカニズムを解明する目的で外リンパ中の窒素酸化物濃度を測定した。実験にはスナネズミを用いた。その結果、虚血から3時間以内に低体温を負荷した群は常温群に比べ、有毛細胞脱落やABR 閾値上昇は有意に軽減された。しかし6時間後に低体温を負荷した場合にはこのような効果はみられず、虚血による内耳障害は防御されなかった。また、同様のプロトコールによってスナネズミの外リンパ中の窒素酸化物濃度を測定したところ、低温処置により虚血1日後のNO2-及びNO3-の濃度上昇は有意に抑制され、その効果は低体温の開始時期が早いほど大きかった。