Otology Japan
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原著論文
直達外傷によるアブミ骨底板陥入
山田 弘之福家 智仁福喜多 晃平荒木 真美佳
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2010 年 20 巻 5 号 p. 692-696

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抄録

外傷性耳小骨離断の報告は多いが、耳小骨連鎖が正常で、かつアブミ骨底板の卵円窓陥入を認めたとする報告は稀である。今回、直達外傷によって、耳小骨連鎖の離断なく、アブミ骨の卵円窓陥入を認めた症例の手術を経験した。初診時から徐々に難聴は進行し、1週間後には聾となったため試験的鼓室開放を行うことで、病態が確認された。アブミ骨の整復のためにキヌタ骨を摘出せざるを得なかった。さらに、アブミ骨の整復は困難で、結果的にアブミ骨摘出を余儀なくされた。キヌタ骨を用いたアブミ手術を行い、幸い聴力改善は認められたが、手術時期と、アブミ骨摘出の是非については検討の余地があると思われる。進行する難聴、めまいの残存がある場合には早期の手術が求められ、アブミ骨はできれば摘出せずに整復することが望ましいが、固着の強い場合には摘出はやむをえないと考える。

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© 2010 日本耳科学会
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