2010 年 20 巻 5 号 p. 711-716
突発性難聴の聴力予後予測におけるDPOAEの有用性について検討するため、同疾患患者78名に対し治療前にDPOAE測定を行った(f2/f1=1.2、L1=80dB SPL、L2=70dB SPL、f2=593~6031Hz、1/3オクターブ毎11周波数)。初診時DPOAE出力レベル、年齢、発症から初診までの日数、めまいの有無、初診時聴力の5つの予後因子と聴力予後とについて、単回帰分析および多重ロジスティック回帰分析を用いて解析した。多重ロジスティック回帰分析の結果、高周波数域(f2=3031、4812Hz)における初診時DPOAE出力レベルは聴力改善率と有意に相関していたが、年齢、発症から初診までの日数、めまいの有無、初診時聴力とは相関が見られなかった。さらに相関が見られなかった4因子について交絡因子補正した多重ロジスティック回帰分析においてもDPOAE出力は聴力予後と有意に関連していた。以上より、高周波数域の初診時DPOAE出力レベルは突発性難聴の予後予測において有用な指標となり得ることが示唆された。