2013 年 23 巻 1 号 p. 40-45
HIVの治療中断に伴い発症した顔面神経麻痺の1症例について報告する。症例は34歳男性で境界型人格障害による精神症状が顕著であった。HAART治療中であったが、抗HIV薬を大量服薬したため治療が中止となっていた際に顔面神経麻痺を発症した。経過観察を拒否したため、ステロイド治療を行ったが改善が見られなかったため、本人の強い希望により第20病日に顔面神経管開放術を行った。術後に著明な改善が見られ、第47病日に完全回復を得た。他科との連携により臨床的判断をもとに治療を進めたが、retrospectiveには、より詳細なウイルス学的検討が望ましいと思われた。HIV患者における顔面神経麻痺の発症は有意に高率であり、今後も同様の症例が生じる可能性は高いと思われた。