2013 年 23 巻 5 号 p. 821-826
耳硬化症に対するアブミ骨手術再手術症例12名12耳を対象とし、初回手術の術式、再手術までの経過、再手術時の術中所見、再手術後の経過を検討した。初回手術では全例で人工耳小骨が使用されており、再手術時の術中所見でピストンのループ部の拡大を2耳に、キヌタ骨長脚の変形を8耳に、アブミ骨底板開窓部の骨性閉鎖を4耳に認めた。キヌタ骨長脚の変形は長脚内側部分に多く認められた。初回手術では人工耳小骨の適切な選択と締結が必要となるが、特にキヌタ骨への粘膜血流が多いとされる長脚内側部分へループ部の過度な圧力が生じないようにすること、キヌタ骨に付着する粘膜をできるだけ保存することが重要と考えられた。再手術による聴力成績は比較的良好であったが、十分な準備を行いそれぞれの病態に応じた適切な術式を選択することが重要となる。