2014 年 24 巻 3 号 p. 221-226
患者は2歳男児で、両側同時性顔面神経麻痺が改善しないため、発症36病日に当科を初診した。両側ともHB gradeVの完全麻痺を呈しており、鼓膜所見・側頭骨CTは、両側中耳炎の所見であった。麻痺の改善がみられず中耳点検目的に両乳突削開術を施行した。乳突蜂巣・鼓室の浮腫状粘膜がみられたが、腫瘍・肉芽病変を認めず、顔面神経管の菲薄化も認めなかった。術後、麻痺は改善傾向を示し、術後1カ月半で治癒と判定した。本症例では耳炎性麻痺と考えられ、乳突削開術によって顔面神経管への炎症波及を直接的に軽減できたことが術後の回復に関与したものと考えられた。
本症例のように、小児かつ両側同時性の顔面神経麻痺の報告はほとんどなく、本症例は非常に稀な症例となった。本症例の経過を述べるとともに、小児両側同時性顔面神経麻痺例の治療方針について考察した。