中耳炎の内耳障害例の中には難治例が存在し、早期診断、治療が望まれる。2008年4月から2014年6月の間に経験した急性中耳炎に骨導閾値上昇を伴った11例12耳について検討した。男性4例、女性7例、年齢は13~63歳で平均年齢は35.5歳であった。治療は、全症例に鼓膜切開、抗菌薬投与、副腎皮質ステロイド投与を施行した。発症から鼓膜切開術までの日数、聴力固定までの日数は聴力予後と相関はなかった。めまいは3例、眼振は6例に認めた。眼振はあるがめまいがない症例も存在した。聴力型は、1例を除いて高音域中心の難聴型を示した。聴力改善度 (治癒+著明回復) は、72.7%であった。聴力予後が回復・不変であった症例は、いずれも眼振を伴う症例であり、眼振を伴う症例では聴力予後が不良の可能性が示唆された。検出菌は連鎖球菌が最も多い結果であった。初診時、高度難聴であった例では聴力予後は不良であった。