2016 年 26 巻 3 号 p. 134-142
小児の健全な心身の育成のためには、人工内耳装用児においてもスポーツ参加は望ましいことであるが、機器の故障やコミュニケーションのしにくさなど問題を抱えている児も少なくない。今回我々は、人工内耳装用児のスポーツ実施状況に関するアンケート調査を実施した。有効回答者76例中スポーツ経験者は53例(69.7%)であり、その73.6%がスポーツ中も人工内耳を装用していた。人工内耳体外機器の故障はほとんどが経験しており、その内容としてはケーブル断線、プロセッサやコイルの故障、サビなどがみられたが、スポーツによるインプラントの故障例はなかった。スポーツ経験者は体外機器の落下、コミュニケーションの困難さ、汗・雨などで濡れるといった不便さを有しており、工夫や注意をすることで対処していた。
人工内耳装用児はスポーツ参加において留意は必要であるが、過剰に制限を加える必要はない。医療、療育者として適切な情報提供や指導を心がけたい。