Otology Japan
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原著論文
外科的治療により消失したアブミ骨筋性耳鳴の一例
木村 百合香大野 慶子本庄 需奥野 秀次小林 一女
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2016 年 26 巻 5 号 p. 664-667

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抄録

病的共同運動は末梢性顔面神経麻痺の後遺症として患者に大きな苦痛を与える。近年のリハビリテーション法の進歩により、その発症頻度は減少傾向であるが、末梢性顔面神経麻痺の診療において常に留意が必要な病態である。そこで、今回我々は、Ramsay Hunt症候群後による表情筋─アブミ骨筋間病的共同運動により生じたアブミ骨筋性耳鳴と慢性中耳炎に対し、鼓室形成術・アブミ骨筋切断術を行い耳鳴が消失した一例を経験したので報告する。症例は70歳男性、両難聴・耳漏と左耳鳴を主訴に当科を受診。両鼓膜穿孔があり両慢性穿孔性中耳炎と診断した。純音聴力検査上、閉眼時に左低音部の閾値上昇を認めた。両鼓室形成術、左アブミ骨筋切断術の施行により、閉眼時の閾値上昇は消失し、さらに耳鳴も完全に消失し、非常に高い満足度を得ることができた。病的共同運動としてのアブミ骨筋性耳鳴は、外科的治療により治療が可能な病態であることに留意を要する。

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© 2016 日本耳科学会
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