Otology Japan
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原著論文
経過中に鼓膜穿孔を生じた先天性真珠腫と考えられた3例:二次性真珠腫との鑑別について
奥田 匠中島 崇博東野 哲也髙木 実花牟禮 豊
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2016 年 26 巻 5 号 p. 674-680

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抄録

鼓室の先天性真珠腫には嚢胞状のclosed型と、島状に存在するopen型がある。前者は鼓膜越しに白色塊が透見され判別は容易だが、後者は耳鏡所見での判別は困難である。一方、鼓膜弛緩部に陥凹を伴わず緊張部に穿孔を有した例で、穿孔縁上皮が鼓室の炎症に乗じて鼓膜裏面に侵入して形成される二次性真珠腫という病態がある。大穿孔、ツチ骨柄付近からの上皮侵入、高齢、長い穿孔歴、乳突腔の発育抑制が特徴とされる。しかし、辺縁性小穿孔で、若年、穿孔原因不明、蜂巣の発育含気が良好という、異なる病態が想定される症例を3例経験した。何れも当初は穿孔がなく鼓膜の大半が白色のため滲出性中耳炎や急性中耳炎、石灰化などと考えられていた。これらは鼓膜裏面のopen型先天性真珠腫が穿孔したものと考えられた。穿孔のない白色鼓膜では真珠腫の存在が滲出性中耳炎や急性中耳炎、石灰化として看過される危険があり注意を要する。穿孔を来した病変は二次性真珠腫との鑑別を要する。

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