2017 年 27 巻 5 号 p. 694-698
中耳の周波数ごとに吸収された音響エネルギーの割合(absorbance)を測定できるワイドバンドティンパノメトリを用いて、日本人成人正常耳のabsorbance 値につき検討した。さらに、補聴器を装用している伝音難聴1例、混合性難聴症例3例、計4例と比較し、補聴器調整の一助となるか否かについて検討した。その結果
1.正常例119耳のabsorbanceの90、10%タイル値および平均値を求め、デフォルトの標準値(範囲)と比較したが音圧差はごく僅かであった。
2.伝音難聴、混合性難聴の補聴器装用症例について、補聴器の利得にabsorbance値を加算した予測閾値と音場閾値の実測値とは関連がみられた。
以上より、補聴器の利得による予測音場閾値と音場閾値の実測値が一致しない場合は、鼓室内の病変による吸収された音響エネルギーも考慮して補聴器の調整をしていく必要がある。