Otology Japan
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原著論文
中耳唾液腺分離腫の1例
吉村 佳奈子豊田 健一郎森岡 繁文藤田 朋己
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2018 年 28 巻 5 号 p. 697-701

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抄録

唾液腺分離腫と唾液腺組織が異所性に発育したものと定義される。中耳分離腫は比較的稀な疾患であり、その一例を経験したので報告する。症例は10歳女児で両側難聴を主訴に受診した。左鼓膜より表在血管の目立つ腫瘤が透見され、CTでは前庭窓周囲の軟部陰影および前庭の拡大と外側半規管の無形成をみとめた。試験的鼓室開放術を施行したところ2つの腫瘤をみとめ、一方は摘出しもう一方は顔面神経と強固に癒着しており部分的な切除生検に留めた。またキヌタ骨長脚は先細りし、耳小骨連鎖の途絶をみとめた。

唾液腺分離腫の確定診断は病理学的検査によるため術前診断は難しい。さらに分離腫は腫瘍ではなく異所性の正常組織であるため、必ずしも完全摘出が必要ではないという意見もある。分離腫の可能性を踏まえ、神経損傷の可能性が高いと判断した場合などは摘出を断念することも必要と考える。また中耳奇形合併の中耳唾液腺分離腫の報告は散見されるが、本症例のように内耳奇形合併例はさらに稀と考えられた。

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© 2018 日本耳科学会
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