Otology Japan
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原著論文
耳かき外傷によるアブミ骨損傷に対して受傷当日に手術を行った小児の1例
北野 公一西村 忠己山中 敏彰北原 糺
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2019 年 29 巻 1 号 p. 69-73

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抄録

耳かき外傷によるアブミ骨の損傷は不可逆的な感音難聴の原因となり迅速な対応が必要となる.しかし過去の報告では受傷当日に緊急手術が行われた例は稀である.今回我々は,耳かきで受傷した12歳男児に当日緊急手術を施行し比較的聴力を維持可能であった症例を経験したので報告する.症例は受傷約3時間後に当科を受診し,約6時間後に緊急手術を施行した.術中所見で,耳かき棒の破片を鼓室内に認めた.アブミ骨は粉砕骨折し,開放された卵円窓を通して内耳内に空気を認めた.空気を生理食塩水で置換し,側頭筋膜で卵円窓を閉鎖し,加工したキヌタ骨で伝音再建した.術後の骨導聴力は過去の報告と比較して保たれていた.アブミ骨が損傷されている例でも早期に外科的治療を行うことで聴力予後に貢献したと考えられた.

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© 2019 日本耳科学会
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