Otology Japan
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原著論文
経外耳道的内視鏡下耳科手術にて聴力改善を認めたMalleus Barの一例
松田 信作柿木 章伸
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2020 年 30 巻 3 号 p. 171-175

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抄録

Malleus barは骨性鼓膜輪とツチ骨を繋ぐbony barを指す.野村らが1988年に初めて報告し,船坂の分類に含まれない耳小骨奇形である.本症例は9歳女児で,アデノイド増殖症と睡眠時無呼吸症候群の疑いにて当院へ紹介受診した.外来初診時の所見と問診から難聴を疑い,純音聴力検査及びティンパノメトリーを施行した.患側である右側の平均聴力は3分法で51.7 dBHL,左15.0 dBHLで,患側の最大気骨導差は40 dBであった.ティンパノグラムは右C型,左A型であった.CT検査にてMalleusより後方に伸びるhigh densityの構造を認め,Malleus barの可能性を考え手術(試験的鼓室開放術,経外耳道的内視鏡下耳科手術)を予定した.Malleus barの削除後,キヌタアブミ関節の連鎖不全を認めた為鼓室形成術IIIi-Mを追加した.術後の聴力はほぼ左右差のない状態にまで改善した.これまでの報告ではmalleus barの削除のみよりも伝音再建を行った症例の方が,聴力の改善を認める傾向があり,鼓室内の詳細な観察を行う上でも経外耳道的内視鏡下耳科手術は有用であると考えられた.

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© 2020 日本耳科学会
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