Otology Japan
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原著論文
緊張部型真珠腫における一期的手術選択例の中・長期的術後成績
染川 幸裕長島 勉久保 志保子宮田 遼高野 賢一
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2020 年 30 巻 4 号 p. 247-256

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抄録

緊張部型真珠腫一期的手術選択117耳を対象に,生存分析の手法を用い,再手術や修正手術などの計画にない二次手術(S2r)を施行することなく伝音再建成功例として推奨される術後気骨導差20 dB以内を保つ症例を経過良好例と定義し,その累積頻度により治療成績を評価した.経過良好例の累積頻度は,術後5年:I型91.0%,III型79.2%,IV型58.8%,術後10年:III型65.0%,IV型50.8%であった.III型とIV型の成績に有意差を認めたが(P = 0.042, logrank test),この差は伝音再建不成功例の頻度差であった.

対象117耳中S2r例は17耳で,内訳は①健全な中耳形態の喪失12耳,②遺残性再発3耳,③伝音聴力修正2耳であった.次に③の病態に影響する因子検索目的で,術前所見や手術操作から独立変数項目を抜粋して生存曲線を基に多変量解析を行った.鼓膜全面の癒着病変(AO)が促進的に,鼓膜張筋腱切断による前・後換気路開大操作が抑制的に有意な因子となった.AO合併例では徹底した換気路開大操作が必要と思われた.

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© 2020 日本耳科学会
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