Otology Japan
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原著論文
MYO15A遺伝子バリアントを有する小児難聴症例の聴力経過
石川 浩太郎西尾 信哉宇佐美 真一
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2020 年 30 巻 4 号 p. 301-306

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抄録

MYO15A遺伝子バリアントを同定した小児難聴症例の約6年に渡る聴力経過を観察できた.症例は2020年2月の時点で13歳の女児で,父親に左耳4000 Hzに35 dBのc5-dipを認めた以外は家系内に難聴者はいなかった.新生児聴覚スクリーニングは未受検で,小学校入学後の健診で難聴を指摘され,6歳5か月で高音急墜型の感音難聴と診断された.その後,徐々に難聴は進行し,2019年4月に高度難聴に進行した.原因検索のため実施した難聴遺伝学的検査でMYO15A遺伝子にc.9415_9418del(p.L3139fs)〈Pathogenic〉と,c.10263C>G(p.I3421M)〈Likely Pathogenic〉の2つのバリアントの複合ヘテロ接合が同定された.MYO15A遺伝子は常染色体劣性遺伝形式をとる非症候群性難聴の原因であり,先天性重度ないしは高音障害型の難聴を呈する場合が多い.一部には進行性難聴を呈する家系も認められ,本症例も同様の表現型に含まれると考えられた.本症例は補聴器とデジタル補聴援助システムの使用で装用効果は十分に得られている.

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© 2020 日本耳科学会
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