Otology Japan
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原著論文
中耳貯留液から診断できた耳管咽頭口原発 粘膜悪性黒色腫例
金沢 弘美吉田 尚弘
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キーワード: 細胞診, 体液, 重粒子線
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2021 年 31 巻 2 号 p. 188-193

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抄録

粘膜悪性黒色腫は皮膚原発と同様に局所再発と遠隔転移をしやすい傾向があり,5年生存率は20–25%程度と頭頸部腫瘍の中で最も予後不良である.今回黒色中耳貯留液による難聴を主訴とした症例の中耳貯留液の細胞診から,耳管咽頭口原発粘膜悪性黒色腫の診断を行なうことができた.体液を用いた粘膜悪性黒色腫の診断は,髄液・腹水・胸水で既に報告がある.

2018年4月に頭頸部悪性腫瘍に対する重粒子線・陽子線治療は保険適応になり,2019年7月にはニボルマブ(商品名オプジーボ)などの免疫チェックポイント阻害薬などの免疫療法もガイドラインに掲載された.粘膜悪性黒色腫の発生部位としては頭頸部領域が最も頻度が高く,内視鏡の精度の向上により,早期(N0)の状態で粘膜の黒色沈着病変から粘膜悪性黒色腫を診断する機会が増えることが予想される.中耳貯留液による細胞診は,早期診断のための安全な方法の一つである.

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© 2021 日本耳科学会
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