Otology Japan
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テーマセッション4
人工内耳と蝸牛内の術後変化~組織反応を中心に~
鎌倉 武史
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2021 年 31 巻 3 号 p. 229-233

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抄録

人工内耳埋込後の蝸牛には電極挿入による骨ラセン板,基底膜,らせん靱帯など蝸牛内構造物への損傷や炎症,線維化,骨新生等挿入された電極への組織反応が見られる.前者は即時性であり,後者は遅発性である.

人工内耳術後の病理組織標本の三次元解析の結果,人工内耳後の言語聴取能(consonant–nucleus vowel–consonant (CNC) word score)は蝸牛内骨新生の体積%や前庭階,中央階,らせん靱帯を通る電極の長さと負の相関,残存らせん神経節細胞カウントと正の相関を認め,蝸牛内線維化の体積%とは相関を認めなかった.また前庭階+中央階内骨新生の体積%は蝸牛内損傷と正の相関を認めた.以上の結果から人工内耳後の言語聴取能の改善には蝸牛内骨新生の抑制が重要であり,蝸牛内骨新生の抑制には蝸牛内損傷の抑制や確実な鼓室階への電極挿入が重要であることが示唆された.

また,片側人工内耳後の側頭骨の免疫染色による電極挿入側と非挿入側の比較検討の結果,コルチ器のDeiters細胞や内外柱細胞等の支持細胞は人工内耳挿入側か否かに関わらず基底回転側で有意に免疫反応に乏しく,頂回転側で免疫反応がより強かった.Deiters細胞や内柱細胞等の一部が有毛細胞に分化転換され得る前駆細胞としての役割を担う可能性がマウスを用いた研究で報告されており,将来内耳有毛細胞再生が実用化された場合,人工内耳後の蝸牛でも有毛細胞再生の可能性が考えられた.

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