Otology Japan
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ネクストジェネレーションセッション7
脊椎動物の大脳・脳幹の組織学標本からヒトの脳の起源を探る
穐吉 亮平加我 君孝
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2022 年 32 巻 1 号 p. 39-46

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抄録

脊椎動物は進化の過程でそれぞれの環境に適応するため中枢神経系を発達させてきた.各脊椎動物の脳の進化の程度は,種により異なることが知られている.これまでそれぞれの脊椎動物の中枢神経や行動の特徴は研究されているものの,進化の過程という観点からそれぞれの脊椎動物の脳機能と種に固有な行動様式に注目した報告は少ない.そこで,それぞれの種で保存される共通の組織形態と進化の過程であらたに構築される組織形態について各脊椎動物の大脳・小脳・脳幹標本を観察した.

魚類・両生類は終脳に比べ小脳・中脳の割合がボリュウム的に大きく細胞構築像もより複雑であった.魚類,両生類では中脳が高位中枢を担い視覚機能に特化した中脳視蓋が高度に発達したためと考えられた.爬虫類・鳥類・哺乳類では終脳の割合が大きく終脳の表層に明確な層構造を認め樹状突起あるいは軸索を示唆する神経線維が認められた.小脳はすべての種でプルキンエ細胞層を含む3層構造を有し,脊椎動物にとって姿勢・運動の調節が生存のために必須であるためと考えられた.

個体発生は系統発生を繰り返す(反復仮説)と考えられており,脊椎動物の脳の進化の過程を観察することは,ヒトの脳の起源を探る手がかりを与えてくれる可能性がある.

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© 2022 日本耳科学会
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