Otology Japan
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ネクストジェネレーションセッション7
ラセン孔列と上,中篩状斑の形態学的検討
松田 信作加我 君孝
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2022 年 32 巻 1 号 p. 47-51

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抄録

内耳道底には,蝸牛に向かう蝸牛神経,前庭半規管へと向かう上・下前庭神経と,顔面筋へ向かう顔面神経がそれぞれ通過するラセン孔列と上,中篩状斑,顔面神経管が存在する.骨性篩状構造を呈するラセン孔列と上,中篩状斑について,その役割・発生過程には未だ不明な点が多い.本研究ではヒト側頭骨病理連続切片を用いて,①ラセン孔列や篩状斑を構成する小孔の孔径サイズ,②胎生期の形成過程とその完成時期を,③小脳出血の1症例の出血進展範囲を観察し,骨性篩状構造の形態学的特徴と役割について調べた.

①ラセン孔列と上,中篩状斑を構成する小孔の孔径の定量的評価を行なった.その結果,横稜の上方に位置する上篩状斑は,下方に位置するラセン孔列,中篩状斑と比較して小孔の孔径が有意に大きい事が分かった.②蝸牛軸およびラセン孔列の胎生期における完成時期は,ヒト胎児標本の観察を行なったところ,蝸牛神経の形成と蝸牛内への分布が先行し,骨性篩状構造は胎生17週頃から始まり21週には完成すると考えられる.③小脳出血症例を観察したところ,血液は蝸牛鼓室階の内耳道側まで流入していたが,限局的であった.骨性篩状構造の役割は,構成する小孔と骨膜,篩状構造を通る神経と神経周膜などにより密に構成されており,内耳を保護するためのサイズバリアとしての機能がその一つとして考えられた.

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© 2022 日本耳科学会
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