2009 年 78 巻 7 号 p. 668-671
偶然を契機にして道を切り開く能力(セレンディピティ)は研究開発プロセスの飛躍的発展を担うものの一つだが,その能力を発揮するには偶然が起きなければ始まらない.先人たちの経験から浮かび上がる共通項は,自ら手を動かし続けて偶然をつかむこと,であるが,本稿ではもう一つの視点を提示する.他人がもたらす偶然を呼び寄せるには,人を動かすプレゼンテーションを心がけるべし.偶然の連鎖で達成された筆者のファイバーヒューズ研究の経緯を例に取り,偶然の3分類に基づく考察を述べたのち,その応用となる研究者自身による情報発信(セルフアーカイビング)事例を紹介する.