2019 年 88 巻 10 号 p. 646-652
波長200nm以下の遠紫外域では,物質内あるいは物質間の電子励起や電子移動に伴う強い吸収が検出される.近年,減衰全反射法(ATR)を採用した新しい分光装置の開発により,液体や固体の簡便かつ系統的な遠紫外分光研究が可能となった.本稿ではその中でも,酸化チタンやイオン液体といった機能性材料研究に焦点を当てた.独自の装置改造を施すことで,光照射下や電圧印加下におけるスペクトル測定が可能となり,光触媒活性などの材料物性との関係を議論することができる.高い汎用性と,目的に合わせた測定機構を比較的容易に導入することができる柔軟性が本系の大きな長所であり,今後のさらなる発展が期待される.