2019 年 88 巻 11 号 p. 716-719
物質や材料の物性は化学状態も含めて電子によって支配されているので,動的現象を理解するためにその時間変化をリアルタイムで追跡することは重要です.光電子分光法とは試料の電子状態や化学状態を直接調べる(プローブする)ことができる実験手法であり,その時分割測定を行うことで時間変化を調べることができます.本稿では軟X線光源として放射光と高次高調波レーザーを用いた時間分解光電子分光法の測定原理を説明するとともに,SiC基板上グラフェン層を対象にフェムト秒(10-15秒)からナノ秒(10-9秒)スケールでのキャリヤダイナミクスの研究例を紹介します.