2019 年 88 巻 2 号 p. 105-109
固体に可視光を照射したとき,その電子構造が一変する現象は光誘起相転移と呼ばれている.電子間に強いクーロン反発が働く強相関電子系と呼ばれる物質群では,光によって生成した電荷キャリヤが強い電子間相互作用を通して周囲の電子系を変化させることにより,超高速の電子相転移が生じることが知られている.我々は,強相関電子系において,テラヘルツパルスと呼ばれるほぼ単一サイクルの強電場パルスを使って電荷キャリヤを生成し,同様な電子相転移を起こすことを目指して研究を進めてきた.本稿では,その具体例として,有機分子性結晶における電場誘起超高速絶縁体‐金属転移について紹介する.