2020 年 89 巻 10 号 p. 573-579
ペロブスカイト酸化物の電子構造を制御する手段として異種アニオンを利用することで,カチオン置換では決して実現できないさまざまな効果をもたらすことが可能である.例えば,O2-をH-で置換することで,カチオンの価数制御などの価数の違いの効果だけでなく,軌道の対称性の違いを利用した低次元構造の実現や,電気陰性度の違いによる結合状態の変化がもたらされる.トポケミカル反応と呼ばれる低温反応では,アニオンの挿入・置換・脱離が複雑に絡み合うことで,さまざまな構造・価数制御が可能である.本稿では,これらペロブスカイト酸化物のアニオン制御について,最近の理論・実験の進展を解説する.