2021 年 90 巻 5 号 p. 303-307
高度な工業製品やインフラストラクチャの普及に伴い,さまざまな環境下で製品や建造物の信頼性や安全性を確保するセンシング技術の創出が急務となっている.テラヘルツ(THz)帯の電磁波を用いたイメージング技術は,対象物を非破壊で検査するための有望な計測法の1つと期待されている.そのため現在,可視光域のように汎用的・簡便に使用できるTHz計測システムが求められている.本稿では,単層カーボンナノチューブ(SWCNTs)フィルムを用いたフレキシブルな全方位THz撮像チップとその検査応用について紹介する.SWCNTs THzセンサの検出性能に関わる物理パラメータをチューニングし,その最適化に基づいてフレキシブル全方位THzイメージャやウェアラブルTHz検査グローブを開発した.これにより,対象物の形状や測定環境に制限されない自由度の高い非破壊検査が可能となった.