2025 年 94 巻 4 号 p. 175-181
1981年,R. Feynmanは量子コンピュータとともに,ハードウェアレベルで確率的に動作するコンピュータを提案した.また2024年にノーベル物理学賞が授与されたG. Hintonの代表的な業績の1つであるボルツマン機械学習も,熱でゆらぐスピンが集合した磁性体をモデルとしている.人工知能の普及に伴う消費電力の増大が深刻化する中,本稿ではFeynmanやHintonの提案を自然な形で実現し,エネルギー効率に優れた人工知能計算を可能とするスピントロニクス確率論的コンピュータについて解説する.組合せ最適化,機械学習,量子シミュレーションなどの原理実証や,高性能化に向けた超常磁性磁気トンネル接合素子の開発について紹介する.