応用物理
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螢石の色と發光現象
吉村 恂
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1933 年 2 巻 12 号 p. 453-456

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抄録

1.種々の色を有する螢石に就いて可視部及び比較的長波長の紫外部に於ける吸收スペクトルを分光光度計又は分光寫眞によつて顴察した.
2.可視部に於ける吸收極大の位置は結晶の色が線色から紅色紫色に變ずるに從つて短波長から長波長の方向に移動して居る.此吸收極大の位置の移動は螢石の着色が結晶中に分散してゐる金屬カルシウムの膠質に基因し,且つその粒子の大きさに依つて色調が變化すると言ふ見地から見る時は興味あることであつて,此實驗で觀察した吸收極大の位置から,緑色紅色紫色の順序に結晶中の膠質カルシウムの粒子が漸次大きくなつてゐることを示して居る.
3.紫外部に於ける吸收は緑色螢石が最も著しく3,640Å, 3,370Å, 3,070Å, 2820Å, 2,740Å及2,620Åに極大を有する選擇吸收を示す.紫色螢石は3,070Åの吸收を示し,淡紅色及無色の螢石は選擇吸收を示さない.
4.此等の紫外部の吸收と螢石の紫外線の刺戟による發光現象とは直接的關係は存在しない.
5.寶達産及び尾平産の緑色螢石は450°に數時間加熱して殆んど無色とした結晶片に於いてもむ尚著しい3,070Åの吸收を示す.故に此吸收帯は此等の螢石中に不純物として含有せられる稀土類元素に基因するものと考へられる.

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