応用物理
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ADP結晶を用いたPiezo-Optic Resonator, (1)
小川 智哉
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1957 年 26 巻 6 号 p. 259-266

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抄録

周波数分析器の濾波素子として広く用いられている圧電結晶共振子(piezo-electric resonator)は,圧電結晶を適当な方位に切り出して作つた振動子が,それの弾性的共振点近くで電気的インピーダンスが大きく変ることを利用したもので,現在では水晶のAT, BT, CT, NTカット等が多く用いられている.
ところで,振動子が弾性的共振を起すと振動の節の部分には非常に大きな歪が生ずるが,この歪に依る光学的異方性(光弾性効果)を偏光を用いて光電管,写真又は肉眼等で検出すれば,その透過光量から振動子の共振の有無強弱がわかるから,このような共振子を並列に幾つか使用して,直視型の周波数分析器にすることが出来る.
このように共振の様子を直ちに光学的に検出する共振子(piezo-optic resonator)を作るには,透明で,圧電定数,光弾性定数及び機械的Q値の三数の積が大き圧い電結晶が必要である.このような条件を満足する結晶の一つは, ADP結晶である.
ADP結晶というのは,第一燐酸アンモニウム(ammonium dihydrogen phoshate: NH4H2PO4)の結晶で正方晶系D2dに属し(Fig. 1),水溶液から育成されるが,結晶水を含んでいないので風解せず,又潮解も湿度90%以上にならないと起らない.しかもロツシェル塩のように室温で強誘電的でなく, -100°Cから+100°C位の湿度範囲で安定で,圧電定数,電気機械結合係数及び電気光学定数が大きいので,音響素子やKerr Cell等として種々の機器に用いられている1) 2) 3) 4).このような長所と相俟つて,最近我国でもADP結晶の工業的育成が行なわれ,結晶の入手及び加工が容易となつた.
そこでADP結晶の45°zカットで短冊型振動子(longitudinal vibrationをする)を作り,それの性質について調べた結果,この共振子のQ値は500~1,000で末だ良好とはいえなかつたが,数十ボルトの電圧で共振させれば,容易に共振を肉眼で検知し得る程度の光量変化があつた.従つてこのような共振子を数箇並列に使用して,簡単な直視型音響分析器が出来る見透しが得られた5).

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