物質中を通過する重イオン阻止能の研究は,軽イオン阻止能のデータ解析精度の向上,核融合開発研究の進展による重イオン阻止能データ確立の要請,重イオン加速器による実験研究の発展により,ここ20年の間にいくつかの進展をみせた.重イオン阻止能解析と不可分な関係にある有効電荷の理論解析と体系的テープル化により,阻止能データを±10~20%の精度で解析することが可能となっている.本稿では, 1960年前後(LSSやFirsovによる重イオン阻止能と飛程に関する理論の提案)から今日に至るまでの,重イオン阻止能研究の進展について解説する.