1990 年 59 巻 7 号 p. 937-943
表面に,ある元素がどれだけの量存在しているかは,表面研究における最も基本的な情報であり,この量が決まっていないため,論争や矛盾点が生じる場合が,しばしば見受けられる.特に,表面の水素については,定量が困難なため,推測あるいは仮定されている場合がほとんどである.われわれは,最近,表面研究に適した手法による,表面水素の定量に成功した.高エネルギーイオンの衝突現象を利用するこの手法は,簡便で,定量性に優れ,しかも高感度である.これにより,“表面に存在する水素量を実際に測りながら”水素が関与する表面現象を追求することが可能となり,すでに,その応用が始められた.