1991 年 60 巻 3 号 p. 212-219
制御熱核融合研究は今日大きな転換期にある.それを刺激するかのように, 2年前,フライシュマンとポンスによって常温核融合が発表され,科学界の大きな話題となった. 21世紀のエネルギー源に確かな見通しをもたない人類にとっては,わらをも〓む思いのひと筋の可能性である.制御熱核融合研究の現状と対比させて,常温核融合の意味を考察する.発表より2年を経た常温核融合の現状を中性子やトリチウムなど核反応生成物の検出を中心に紹介し,問題点の指摘と検討を行う.常温核融合現象のカギは水素吸蔵金属の物性にある.今後の研究推進には,現象の再現性をもたらす要因の見極めが不可欠である.