1991 年 60 巻 8 号 p. 794-798
陽電子消滅によるSi中の欠陥評価の最近の進展について紹介する.最近,半導体の欠陥が陽電子消滅特性に及ぼす効果の原理が実験的および理論的に明らかとなった.基礎的側面を踏まえた上で,イオン注入によって導入される原子空孔型欠陥の性状,酸化膜界面の水素の挙動,酸化膜応力により誘起される酸素原子の再配列など最新の知見について述べる.イオン注入により導入された空孔型欠陥の情報は,他の方法では得られないものである.また,陽電子がホール,水素と似た挙動をすることから,水素によるダングリングボンドのターミネーションやホールトラップの研究に有力であることもわかってきた. Siの機械的強度と酸素原子の役割について新しい考え方を提案する.