最近遷移金属錯体の固体に新材料としての期待がよせられているが,中でもπ-d電子系とよばれる一群の物質の固体物性に大きな関心がはらわれている.π-d電子系では比較的遍歴性の強いπ電子共役系と局在性の強いd電子系が共存し,それらがフェルミ準位近傍で相互作用している.これらの相互作用を通し之,.d-π電荷移動,相転移に伴う次元性の交差現象,磁場による金属性の回復現象など従来の分子性物質では観測されなかった新しい現象が見つかりっつある.これらの現象を金属フタロシアニン導体,銅-DCNQI錯体,BEDT-TTF錯体, BETS錯体,金属グリオキシム錯体の研究例を紹介しながら解説する.