1995 年 64 巻 4 号 p. 339-343
1979年に,最初の分子性超伝導体(TMTSF)2PF6が高圧極低温下で見つかって以来,その数は増え続け,現在では約50個の分子性超伝導体が知られている.ここではそれらのうちM (dmit)2塩[M=Ni, Pd, Pt, Au]とよばれる金属錯体を含む分子性超伝導体についてまず紹介する.ついで,「立体交差型力ラム構造」を持つ,M (dmit)2塩唯一の常圧超伝導体,α-EDT-TTF [Ni(dmit)2]の特性について述べ,この物質における超伝導と電荷密度波(あるいはスピン密度波)の共存の可能性について議論する.