1996 年 65 巻 3 号 p. 244-250
合金の表面近傍の構造や組成分布は一般に固体内部とは異なる.さらに,温度や化学吸着によつてその構造や組成分布に劇的な変化が現れることもある.このような性質を持っ合金表面は,その組み合わせの多様さも含めると,単体金属表面とは比べものにならない変化に富む多彩な表面相を形成することから最近特に注目されている.一方で,合金表面自身の性質は金属吸着系に見られる表面合金の形成や界面反応の機構とも密接に関連している.これらの機構を理解するためにも,合金の表面近傍の構造や組成を原子レベルで明らかにする必要がある.イオン散乱法や走査トンネル顕微鏡の発達に伴って,その様子は次第に明らかになりっつある.この解説では,筆者らが行ってきた合金表面の原子層単位での組成および構造,化学吸着による表面組成の変化あるいは表面合金の形成などについて述べる.