応用物理
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はじき出しを起こさない固体内衝突による照射効果
伊藤 憲昭
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1998 年 67 巻 6 号 p. 638-647

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抄録

固体に粒子線を照射するとき,弾性衝突により構成する原子にノックオンしきい値以上のエネルギー が付与されると格子点からはじき出され照射効果を誘起する.しかしながら,固体に付与されたエネル ギーの大部分ははじき出しを誘起しない衝突,すなわち電子励起とノックオンしきい値以下のエネルギを付与する弾性衝突に費やされている.これらの衝突によって誘起される照射効果について概観する. まず,固体の電子励起によって局所的な結合の切断が起こりうることを示し,その条件が固体の種類によって異なることを述べる・主要な固体のバルクでの電子励起による欠陥生成について,アモルフアス 物質と高密度励起効果に重点を置き論じる.表面,界面における電子励起効果についていくつかの例を あげて述べる.はじき出しを起こざない弾性衝突でも表面や界面では照射効果が起こることを述べ,シリコンのアモルファス・結晶界面のイオン照射による移動にっいてその機構を論じる.はじき出しを伴う 照射効果と異なり,ノックオンしきい値以下の衝突による照射効果は,物質依存性が強くまだ十分理解 さ:れていないことが多いことから,この現象の研究について展望する.

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© 社団法人 応用物理学会
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