2000 年 69 巻 9 号 p. 1074-1079
強磁性金属薄膜パターンを高密度集積し, DRAMのように電子的にメモリー動作を行う磁性ランダムアクセスメモリー (MRAM) の研究開発が,実用化を児据えた急速な進展を見せている.メモリー動作の基本となっているのは,強磁性体におけるスピン偏極伝導電子の輸送特性と,極微構造磁性体の磁気特性である. MRAMは,磁気記録の不揮発性・高集積性と半導体メモリーの高速性を兼ね備えた画期的な惰報記憶デバイスとして,システムLSI,携箒情報機器,マルチメディア記録媒体などへの応用, DRAMの代替などが検討されている.本稿では, MRAM技術の概要,機能動作にかかわる材料物理,実用化に向けての技術課題,次世代惰報記憶デバイスとしての将来展望について述べる.