主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
本研究は,2020年上半期の愛知県内の特殊詐欺被害者と看破者に対する調査をもとに,被害への遭いやすさへとつながる心理特性を特定し,被害防止につながる観点を抽出することを目指して行われた。詐欺被害は全世界的にも問題となっている一方,被害への遭いやすさも含めた心理プロセスについては未解明な部分も多い(e.g., Hanoch, 2021)。本研究では,2020年1月から5月に愛知県内の特殊詐欺被害者196名と,途中で詐欺を見抜き被害を免れた自己看破者52名にアンケートを実施し回答を得た。分析の結果,被害者は自己看破者に比べ,「自分は被害に遭わない」と考えていた傾向が高かった他,一般的な他者に対する信頼も高く,一緒に会合へ赴くような人の数も少なかった。また,新たな詐欺の手口に関する知識も少なかった。これらの結果は,社会関係資本が特殊詐欺被害の抑制に寄与することを示していることに加え,新たな手口の啓発活動が一定の効果を持つことも示している。詐欺の被害は,金銭面だけでなく,心理的にネガティブな影響も持つ(Modic & Anderson, 2015)ことからも,さらなる検討が望まれる。