主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
ストロボ照明下でカエルの摂餌行動を観察し,ヒトの運動視知覚と比較して両者の違いを調べてみた。本研究の結果の一部はすでに発表されているが(日心56回大会,ECVP’94など),今回改めて先の実験結果を見直し新たな観点から考察を行った。ストロボ光で照射される沖縄コオロギ(大きさ3~4 cmの成虫)へのアズマヒキガエルの摂餌行動は,低頻度(1~3 Hz)のストロボ照明下であっても,困難を伴うがほぼ確実に実行された。ヒトの視覚機能では到底識別不可能な照明環境にあって,なぜカエルは餌の存在を確かめることができるのか。この違いは対象認知の仕組みにあると考えられる。われわれは,視物が空間の位置点Aから点Bに移ったときに,同じ物が位置を変えて移動したと見るのが普通で点Bに別物が現れたとは見ない。この視覚的同一性の知覚は,ヒトの場合「運動」を手がかりにして確認するが,カエル場合は運動ではなく「空間的位置変化」を手がかりにして視物の同一性を把握していると推測される。