主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
青年期以降,苦境にある他者への共感は加害者や状況への怒りに変換され,様々な社会的行動の動機づけを強めると仮定されている。本研究は他者の苦境への感情と特性共感との関連を分析することを目的に,20歳から50歳代の800名に5つの仮想物語で生じた感情を22の感情語から選択するよう求めた。因子分析では,全場面で怒りと同情の2種類の感情が生起していた。各感情の強さと多面的共感性では,共感的関心と視点取得が怒り(r=.31, r=.18)及び同情(r=.34, r=.27)と,個人的苦痛が同情(r=.14)と相関していた。怒りと同情のパターンから,参加者は同情優位型(N=121),怒り優位型(N=112),両感情生起型(N=60),怒り低位型(N=242),両感情低位型(N=265)に分かれた。4(年代)×2(性別)×5(感情パターン)のANOVAで,共感的関心で感情タイプの主効果が有意(F(4,760)=25.19, p<.001, 偏η2=.12)になり,両感情優位型は有意に高かった。他者の苦境に対する共感は同情と怒りの2種類の感情として生起し,それには特性共感が関係することが示唆された。