抄録
がん治療の進歩により,がん患者は増加し,疼痛,倦怠感,身体機能低下などの症状が長期に残存し,日常生活障害や生活の質(Quality of Life: QOL)の低下などに影響することが重要な課題となっている。がん関連疼痛の有病率は約40%で,中等度以上の疼痛も約30%に認められるが,依然として疼痛管理は不十分とされている。背景には,がんの進行・転移に伴う疼痛と治療関連疼痛が併存し,機序と臨床像が多様化していることや医療者による疼痛の過小評価がある。本総説では,がん関連疼痛を「がん性疼痛」と「がん治療後疼痛」に分類し,評価と治療の実践的枠組みを整理した。がん性疼痛では骨・内臓転移など重篤転帰につながる病態の迅速なトリアージが最優先となる。一方,がん治療後疼痛には術後慢性疼痛,薬物療法後疼痛(化学療法後末梢神経障害,アロマターゼ阻害薬誘発性筋骨格系症状),放射線治療後疼痛が含まれ,中枢性感作や心理社会的要因の関与が示されている。がん関連疼痛の評価では,まず骨・内臓転移など重篤転帰につながる病態をトリアージし,レッドフラッグ所見と再発リスク層別化に基づいて画像検査の適応と緊急度を判断する。その上で,適応の乏しい反復的画像検査は,不安を助長し得る点を踏まえ,適切な評価に基づき重篤病変の除外を行った後,治療歴,疼痛の時間経過,神経学的所見,全身症状を統合し,「がん治療後疼痛」,「非がん性疼痛」の影響を評価する。さらに,疼痛強度と能力障害,心理的要因,中枢性感作および中枢性感作関連症状を段階的に評価する。がん関連疼痛に対する治療では,鎮痛剤治療に加えて,非薬物治療として,リハビリテーション,疼痛教育,自己管理支援を統合した集学的介入により,機能障害と活動制限の最小化を目指す。本総説は,多様ながん関連疼痛に対する臨床意思決定を支援する評価・治療の整理を目的とした。