2023 年 76 巻 28 号 p. 21-34
本稿では、欧州特許庁の統計解析用データセットであるPATSTATを用いて、鉄道関連産業(メーカー)の特許出願動向に関する国レベルの包括的な分析を行った。結果は以下のとおりである。鉄道関連技術の特許化は、2000年代の初めまでのおよそ100年の間、増加傾向かつ安定的に推移していた。ただし、2000年代半ばから、中国が爆発的な勢いで出願を増加させている。中国発特許の急増に伴い、現地企業等による模倣や権利化を抑制するために、日米欧の企業が防衛的に中国への特許出願を増やしていることが示唆された。また、中国国内の急速な出願増加に反して、中国発のパテントファミリーについては、自国外への出願が非常に限られていることも明らかになった。このことは、少なくとも中国特許の質が高いことを示すものではない。ただし、すべての発明が特許化されているわけではなく、革新的な技術が戦略的に秘匿されている可能性も否定できない。加えて、世界最大の鉄道車両メーカーである中国中車が国外市場で一定のシェアを獲得していることは事実である。設備・車両の高度化や安全性の要請によって、当該産業における技術開発の重要性が高まっていることに疑念の余地はない。