2023 年 76 巻 28 号 p. 59-78
本稿では、インフラ産業における知的財産権について公共性の観点からその限界性を考察し、インフラ産業のライフライン性の定義に着目した。鉄道や港湾といったインフラ基盤から出発した「不可欠施設」の概念は、その源流であった米国では適用されなくなる一方、欧州や中国では明確に法制化され、最近の中国の判決においては標準必須特許のみならず非標準必須特許についても不可欠施設論を適用される事例が出てきている。中国において日本企業の特許ライセンスについて、不可欠施設論を適用されて敗訴した最近の事件などの分析を行ったところ、標準必須特許でなくとも製造工程における必需特許については、一定の条件でライセンス拒絶は違法であるとの判決が出されている。しかしながら、中国における必需特許についての要件はいまだ明確に定義されていないなど課題が残されている。
また、近年バイオやIT産業の急速な発展に伴って、遺伝子工学や電気通信分野も公共性、ライフラインとしての重要性が高まっており、技術標準を構成する技術やリサーチ・ツールのような技術もインフラ産業としての要素が高まり、特許法における裁定実施権や独禁法における優越的地位の濫用などの観点から今後の動向が注目される。