2023 年 76 巻 29 号 p. 57-78
不正競争防止法のうち標識の保護に係る諸規定の要件該当性判断において、需要者の認識が考慮される場合がある。需要者の認識を直接的に測定する需要者アンケートは裁判官の心証形成を助ける有力な手段となりうる。
需要者アンケートが妥当なものと認められるために特に重要なのは、各要件の判断に資する需要者の認識とはどのようなものかを明確化し、それを踏まえて質問票を設計することである。その点についての十分な分析のないままに作成された質問票を用いた調査の証拠価値は乏しいものにならざるをえない。
本稿では、不正競争防止法2条1項1号の①「周知性」、「特別顕著性(セカンダリー・ミーニング)」、②「混同のおそれ」、③「普通名称化」の3つの論点について、実務的・学術的知見の蓄積のある米国を参照し、また調査技法の検証のために筆者らが実施した実証研究の結果にも触れつつ、質問票の設計を中心に需要者アンケートの方法論を検討する。