抄録
水酸アパタイト(HAp)は整形外科領域で幅広く利用され、その中でアパタイトセメントは任意の形状に加工できるという特長をもつ。我々はこれまでに生体関連物質のイノシトールリン酸(IP6)をHApに表面修飾し、そのキレート能を活用して短時間に硬化する新規のキレート硬化型セメントの作製に成功している。しかしながら、HApセメントは骨置換性がないため、インプラント後に体内で吸収されにくいという問題があるので加齢に伴う骨構造の変化などに対応できない。そこで、本研究では、生体吸収性を有するα-リン酸三カルシウム(α-TCP)を出発物質として用いて、α-TCP単一相からなるキレート硬化型セメントの試作を行ない、その化学組成と圧縮強度について調査した。