抄録
植物資源(バイオマス)を原料とする燃料用バイオアルコールは、石油代替エネルギーとして注目され、例えばエタノールの場合、年間世界生産量が2001年以前の2,000万kL程度から2006年には5,000万kL程度に達し、今後もさらに世界各国で生産量を増加させる計画が進められている。穀類や糖類に代わり、木質セルロースや廃材など様々な原料からエタノールやブタノールなどを製造する技術開発が盛んに進められている。酵母による発酵法では、濃度4~10 重量%のエタノールが得られるが、車載用燃料として利用する場合、エタノールを99.5重量%程度にまで濃縮する必要がある。現在のところ、バイオアルコールの濃縮には多量の熱エネルギーを必要とする蒸溜法が用いられており、少ないエネルギーで高効率に水とアルコールを分離する技術の確立が強く求められている[1]。エタノールは水と任意の割合で混合するものの、アルキル鎖のために疎水的な性質を有する。そこで本研究では、交互積層法を用いて単分散シリカ微粒子の表面を全フッ化スルホン酸高分子(Nafion)超薄膜で修飾することで粒子表面を疎水化し、粒子表面の親水および疎水性の違いを利用して水とアルコールの高速分離を試みた。