抄録
チタン酸アルミニウム(Al2TiO5:AT)は,大きな熱膨張係数の異方性を有するため,焼成後の冷却過程で発生する熱応力により,結晶粒界に多数の微小き裂が生成する.その結果,ATセラミックスには,優れた耐熱衝撃性と断熱性が発現する.従来より,これらの特性を期待して,ATセラミックスをAl鋳造用治工具に適用することが検討されており,既に,一部の鋳造現場に採用されつつある.例えば,ラドルやストーク等はAl合金溶湯中への浸漬・脱湯の動的環境下にあるため,これに起因した熱応力が発生する.しかし,ATセラミックスのバルク特性は温度変化に伴う粒界き裂の開閉により大きく変動するため,実際にどのような熱応力サイクルを受けているのかは不明である.本研究では,実機使用環境を模擬して,Al合金溶湯中へのATセラミックスの繰り返し浸漬試験を実施し,そこで発生する熱応力を解析すると共に,その耐久性を加速評価した.また,Al合金溶湯に対するATセラミックスの難濡れ性を改善するために,Al2O3やMgAl2O4薄膜を形成したATセラミックスについても比較評価した.