抄録
症例は72歳男性。他院で胸部食道癌と診断され,併存疾患のため手術不能と診断され,内視鏡治療目的にて平成3年8月20日紹介入院となった。入院時食道は完全閉塞をきたしていた。8月27日Celestin pulsion tubeを用いて,内視鏡的プロテーゼ挿入術を施行したが,経口摂取改善が得られず,9月19日屈曲型試作プロテーゼ再挿入を行った。その後,経口摂取改善を認め,外来通院となった。通院中プロテーゼ胃内落下のため抜去し,経過観察としたが,平成5年1月まで嚥下障害は全く消失している。内視鏡的に粘膜面には癌の遺残がなく,狭窄も認めない。プロテーゼによる癌の壊死脱落のため,長期経口摂取可能例であると思われる。